山瀬まみ"25th Anniversary Best Album"を買いに行く編
2011年に初めて山瀬まみの歌の存在を知り、興味を抱き始めたころ、25周年ベストアルバムの発売の情報知る。
十代のころはCDショップに足しげく通い、お店で買うことに喜びを感じていた世代なので、この山瀬まみのベストアルバムも店頭で買いたいと思い、発売後に近所のお店にいってみることにした。
ところが店内を見回しても、山瀬まみのCDを売っている様子がない。やはり店頭じゃ売ってないのかなーと諦めていると、一緒に来ていた妻が「店員さん聞いてみた方がいいんじゃない?」と僕に言ってきた。しかし、自分には恥ずかしくて聞きたくない、と言うと、妻が「私が聞いてくる」と店員さんのところへ向かった。この後目の当たりにした光景に「聞かなくてよかった…」と激しく安堵することになる。
妻「発売されたばかりの山瀬まみさんのベストアルバムはこのお店に置いていませんか?」
店「……え?えっ? だ、誰のアルバムって言いました?」
妻「山瀬まみさんです」
店「…や、山瀬まみって、あの山瀬まみですか…?」
妻「はい」
店「…ちょっと分からないので調べますね…」
明らかに店員は動揺していた。
新星堂では恐らく耳にすることのない名前が出てきて困惑したんだろう。
店員は戻ってきて店には置いていないことを伝えてくれた。
これを聞いたのが純真そうな妻ではなく、僕が聞いていたなら、きっとこうなったであろう…
この店員はまっさきに仕事仲間や友達にこの事件を報告する。
「山瀬まみのアルバム探しているイカれた男がいたんだよ!マジ焦った!耳を疑ったよ!そもそもそんな誰も買わないようなCD、普通の店に置くわけねーだろ!」
そんな光景が容易に想像できた。
僕は心底聞かなくて良かった!と胸を撫で下ろした。
一応山瀬まみはホリプロなので、もしかしたら売り出しているのでは?そんな淡い期待があった。
結局店頭で買うのは諦めて、ネット注文しベストアルバムを手にしたのであった。
山瀬まみ-25th Anniversary Best Album
デビュー曲「メロンのためいき」は、作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂(ユーミン)という松田聖子のヒット曲「赤いスイートピー」を産み出した名コンビ。本格派アイドル路線で売り出そうという事務所の意気込みを感じる。鼻声でお馴染みの山瀬まみだが、歌声にはそんな感じはない。松田聖子ってのもすごい歌手だが、それにも迫る勢いの歌声を見せる。
「セシリアBの片想い」「Heartbreak Cafe」「Strange Pink」と松田聖子を手掛けた松本隆によるアイドル路線の曲が続く。時折深い声と甘い声を使い分け、表情豊かに歌い上げる。
「怪傑ぶんぶんガール」「可愛いゝ人よ」では前の4曲の落ち着いたムードからアップテンポでポップな曲調に。恐らくデビューしてヒットに恵まれないことに路線変更を図ったのだろう。ネットでみた映像ではダンスもより動きのあるものになり、活発な雰囲気で売り込もうと思ったのだろう。
つづいてはアニメのテーマソング。アニメとタイアップして売り込もうという戦略だろう。
「スターライト・セレナーデ」は機甲戦記ドラグナーのテーマ。ロック調の曲に今度は力強い歌声を披露。しかし、結果的に同じシリーズのZガンダムの森口博子のようなヒットは得られず。同じドラグナーからの「Shiny Boy」はしっとりとしたバラード。
「星空のエトランゼ」「さよならの仔猫」は小林よりのり原作ホワッツマイケルのテーマ。こちらは優しい歌声。このアニメでは声優としても参加したらしい。同アニメからもう一曲「失恋ブギ」ではノリの良い弾けた歌声。
続いては、当時のバンドブームに乗っかってやろうという意図見え見えの"山瀬まみロック化計画"と銘打って発表されたアルバム"親指姫""親指姫ふたたび"から。このアルバム、アイドル山瀬のファンからは否定的な意見が多いようだが、逆に日本ロック・メタルファンからは隠れた名盤として語られることも。理由は参加ミュージシャンの豪華さから(私は日本メタル界は詳しくない)。Gはジェットフィンガー横関敦、Keyは三柴理などが弾きまくり。作曲陣に奥田民生、デーモン小暮、矢野顕子、ZIGGYや筋肉少女のメンバー、筋小のカバーも収録。(因みに廃盤です 泣)
「ゴォ!」は奥田民生作曲。これまでの繊細さをかなぐり捨てたヤケクソ気味のシャウトを披露する山瀬まみ。良し悪しはともかくこの振り幅が見事。アイドルファンが困惑するのも分かる。山瀬本人は色物臭を感じつつも、歌える喜びと自由にノビノビ歌えることを楽しんでいたようだ。本人のなかではこれが代表曲とコメントしている。
もうひとつ「Buricco」はギターのリフがカッコイイ。こちらでもアイドル期とは対称的な豪快な歌声。
そしてベスト以外では最後のアルバムとなっている"マイトベビー"から「あ不思議な気持ち」「窮屈で退屈」。今度はロック路線から一転、お洒落なジャズ風ムード。甘えたような歌声で曲のイメージを作り上げる。
"新婚さんいらっしゃい"の企画から「Heart Candle」は桂文枝(当時:三枝)とのデュエット。「笑顔でね」はつんく♂による新婚をイメージした曲。
最後の「Thank you all my friends」はこのベストのために収録された新曲。
ちなみにDVDも付いており、「Candy」という山瀬まみの水着姿も拝めるデビュー当時のプロモ映像。親指姫のロック化計画で行われたライブビデオ2本が入っている。超レア物。
どこかの記事で見かけたのは、このライブ映像は横関敦のライブ演奏が見られる唯一の公式映像作品なんだとか。
こうやって順に聴いていくと、時代と状況に合わせて事務所があの手この手で何とかヒットだそうと躍起なっているのが伝わる。それに持ち前の歌唱力と器用さで答える山瀬まみ。
でも大きなヒットには繋がらない。
マイトベビーを最後に商業的に見切りを付けられる。山瀬まみの歌は商売にならない。
約11万人のオーディションから選ばれ、事務所の期待を背負ってデビューも売れない。大好きな歌は続けたいけれどこれはあくまでビジネスで、利益が上がらないなら続けられない。それをよくわかっている。歌いたい気持ちを心にしまい、バラエティーに活路を見いだし、芸能界を生きていく道を選んだ。
そういう風に感じてしまう。
かつて僕も自分の音楽で食べていきたいと思って、挫折して諦めた身なので、何となくそんな自分と重ね合わせてしまう。
もちろん、数年でなにも残せず諦めたちっぽけな自分とは比べ物にならないけれど。
このアルバムをよく車で運転しながら聴いていた。普段MetallicaやらRushやらDevin Townsendやら洋楽ロックメタルばかり流しているので、趣味の合わない妻にとっては日本語の歌が聴けるので気に入ってくれていた。
こんな風に過ごしてほんの1ヶ月後、山瀬まみが大きな心の支えとなる出来事が起こる。
つづく…
十代のころはCDショップに足しげく通い、お店で買うことに喜びを感じていた世代なので、この山瀬まみのベストアルバムも店頭で買いたいと思い、発売後に近所のお店にいってみることにした。
ところが店内を見回しても、山瀬まみのCDを売っている様子がない。やはり店頭じゃ売ってないのかなーと諦めていると、一緒に来ていた妻が「店員さん聞いてみた方がいいんじゃない?」と僕に言ってきた。しかし、自分には恥ずかしくて聞きたくない、と言うと、妻が「私が聞いてくる」と店員さんのところへ向かった。この後目の当たりにした光景に「聞かなくてよかった…」と激しく安堵することになる。
妻「発売されたばかりの山瀬まみさんのベストアルバムはこのお店に置いていませんか?」
店「……え?えっ? だ、誰のアルバムって言いました?」
妻「山瀬まみさんです」
店「…や、山瀬まみって、あの山瀬まみですか…?」
妻「はい」
店「…ちょっと分からないので調べますね…」
明らかに店員は動揺していた。
新星堂では恐らく耳にすることのない名前が出てきて困惑したんだろう。
店員は戻ってきて店には置いていないことを伝えてくれた。
これを聞いたのが純真そうな妻ではなく、僕が聞いていたなら、きっとこうなったであろう…
この店員はまっさきに仕事仲間や友達にこの事件を報告する。
「山瀬まみのアルバム探しているイカれた男がいたんだよ!マジ焦った!耳を疑ったよ!そもそもそんな誰も買わないようなCD、普通の店に置くわけねーだろ!」
そんな光景が容易に想像できた。
僕は心底聞かなくて良かった!と胸を撫で下ろした。
一応山瀬まみはホリプロなので、もしかしたら売り出しているのでは?そんな淡い期待があった。
結局店頭で買うのは諦めて、ネット注文しベストアルバムを手にしたのであった。
山瀬まみ-25th Anniversary Best Album
デビュー曲「メロンのためいき」は、作詞:松本隆 作曲:呉田軽穂(ユーミン)という松田聖子のヒット曲「赤いスイートピー」を産み出した名コンビ。本格派アイドル路線で売り出そうという事務所の意気込みを感じる。鼻声でお馴染みの山瀬まみだが、歌声にはそんな感じはない。松田聖子ってのもすごい歌手だが、それにも迫る勢いの歌声を見せる。
「セシリアBの片想い」「Heartbreak Cafe」「Strange Pink」と松田聖子を手掛けた松本隆によるアイドル路線の曲が続く。時折深い声と甘い声を使い分け、表情豊かに歌い上げる。
「怪傑ぶんぶんガール」「可愛いゝ人よ」では前の4曲の落ち着いたムードからアップテンポでポップな曲調に。恐らくデビューしてヒットに恵まれないことに路線変更を図ったのだろう。ネットでみた映像ではダンスもより動きのあるものになり、活発な雰囲気で売り込もうと思ったのだろう。
つづいてはアニメのテーマソング。アニメとタイアップして売り込もうという戦略だろう。
「スターライト・セレナーデ」は機甲戦記ドラグナーのテーマ。ロック調の曲に今度は力強い歌声を披露。しかし、結果的に同じシリーズのZガンダムの森口博子のようなヒットは得られず。同じドラグナーからの「Shiny Boy」はしっとりとしたバラード。
「星空のエトランゼ」「さよならの仔猫」は小林よりのり原作ホワッツマイケルのテーマ。こちらは優しい歌声。このアニメでは声優としても参加したらしい。同アニメからもう一曲「失恋ブギ」ではノリの良い弾けた歌声。
続いては、当時のバンドブームに乗っかってやろうという意図見え見えの"山瀬まみロック化計画"と銘打って発表されたアルバム"親指姫""親指姫ふたたび"から。このアルバム、アイドル山瀬のファンからは否定的な意見が多いようだが、逆に日本ロック・メタルファンからは隠れた名盤として語られることも。理由は参加ミュージシャンの豪華さから(私は日本メタル界は詳しくない)。Gはジェットフィンガー横関敦、Keyは三柴理などが弾きまくり。作曲陣に奥田民生、デーモン小暮、矢野顕子、ZIGGYや筋肉少女のメンバー、筋小のカバーも収録。(因みに廃盤です 泣)
「ゴォ!」は奥田民生作曲。これまでの繊細さをかなぐり捨てたヤケクソ気味のシャウトを披露する山瀬まみ。良し悪しはともかくこの振り幅が見事。アイドルファンが困惑するのも分かる。山瀬本人は色物臭を感じつつも、歌える喜びと自由にノビノビ歌えることを楽しんでいたようだ。本人のなかではこれが代表曲とコメントしている。
もうひとつ「Buricco」はギターのリフがカッコイイ。こちらでもアイドル期とは対称的な豪快な歌声。
そしてベスト以外では最後のアルバムとなっている"マイトベビー"から「あ不思議な気持ち」「窮屈で退屈」。今度はロック路線から一転、お洒落なジャズ風ムード。甘えたような歌声で曲のイメージを作り上げる。
"新婚さんいらっしゃい"の企画から「Heart Candle」は桂文枝(当時:三枝)とのデュエット。「笑顔でね」はつんく♂による新婚をイメージした曲。
最後の「Thank you all my friends」はこのベストのために収録された新曲。
ちなみにDVDも付いており、「Candy」という山瀬まみの水着姿も拝めるデビュー当時のプロモ映像。親指姫のロック化計画で行われたライブビデオ2本が入っている。超レア物。
どこかの記事で見かけたのは、このライブ映像は横関敦のライブ演奏が見られる唯一の公式映像作品なんだとか。
こうやって順に聴いていくと、時代と状況に合わせて事務所があの手この手で何とかヒットだそうと躍起なっているのが伝わる。それに持ち前の歌唱力と器用さで答える山瀬まみ。
でも大きなヒットには繋がらない。
マイトベビーを最後に商業的に見切りを付けられる。山瀬まみの歌は商売にならない。
約11万人のオーディションから選ばれ、事務所の期待を背負ってデビューも売れない。大好きな歌は続けたいけれどこれはあくまでビジネスで、利益が上がらないなら続けられない。それをよくわかっている。歌いたい気持ちを心にしまい、バラエティーに活路を見いだし、芸能界を生きていく道を選んだ。
そういう風に感じてしまう。
かつて僕も自分の音楽で食べていきたいと思って、挫折して諦めた身なので、何となくそんな自分と重ね合わせてしまう。
もちろん、数年でなにも残せず諦めたちっぽけな自分とは比べ物にならないけれど。
このアルバムをよく車で運転しながら聴いていた。普段MetallicaやらRushやらDevin Townsendやら洋楽ロックメタルばかり流しているので、趣味の合わない妻にとっては日本語の歌が聴けるので気に入ってくれていた。
こんな風に過ごしてほんの1ヶ月後、山瀬まみが大きな心の支えとなる出来事が起こる。
つづく…
I bought this album :o
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