In The Woods... "Heart Of The Woods"の和訳 -1st "HEart Of The Ages"

In The Woods...  HEart Of The Ages (1995)

僕がこのアルバムを手にいれたのは、1996年だったと思う。もっと面白いバンドはないかと、BURRNの特集で知り、「情感豊かなスローなブラックメタル」のようなコメントや、ジャケット写真の陰鬱な雰囲気にひかれた。メタル好きなくせに速い曲が好きではないという、ひねくれた趣向。暗く悲しい音楽を求めていた。そんな自分にぴったりハマったアルバムだった。ブラックメタル特有のトレモロリフを基調としながらも、歌は悲鳴のような歌とクリーンなエンペラーのような歌と半々、女性ボーカルも所々に。他のブラックメタルのような過激なブラストビートはない。メロディックな歌とギターの後ろでは寒々としたキーボードが響き、まさにバンドの名のごとく凍てつく神秘の森の中にいるかのような気分になる。冒頭はソナーのようなエコー音が繰り返し、徐々にキーボードが加わり数分鳴り続け、神秘の森へ誘われるようだ。ギターと歌が雄大なメロディを奏で、ブレーク、語りが入りついには悲鳴のような声に変わり、絶叫と共にトレモロリフに突入する。
1st track

当時雪山に滑りにいく機会があり、深夜雪山を眺めならこのアルバムを聴くと雰囲気はバッチリ。凶悪なブラックメタルをを求めているならお勧め出来ないが、僕のようにディストーションギターの音に悲しげな美しさを求め、孤独な切ない気分に浸りたい人には合うかもしれない。Burzumというブラックメタルの象徴的なバンドと同じレコード会社からの発売ながら、彼ら自身、ブラックメタルであることは否定していて、King CrimsonやPink Floydを聴いたり、曲のカバーまでしている。本作の日本版ボーナストラックはJefferson AirplaneのWhite Rabbitだし、そもそも当時日本版もプログレレーベル・マーキー/ベルアンティークから発売されていた位なので、そんなスタンスのブラックメタル風音楽と言えるかもしれない。
日本版の裏側
とにかく、はっきりジャンル分けするのが難しい独特のスタンスだが、僕はそんな所が気に入ってたりする。長年似たようなバンドを探してみたけれども見つけられていない。In The Woods... は唯一無二の存在、そう思っている。再結成時に発売されたボックスセット「Heart of the woods」にそんな彼らのデビューまでの経緯や、音楽的なスタンスや当時の思いが語れていたのを、下記に和訳したのでご覧なってください。

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Ovl. Svithjod  : Vocals
Christian "X" Botteri : Guitars
Christopher "C:M." Botteri : Bass
Oddvar A:M (R.I.P 2013) : Guitars
Anders Kobro : Drums
Synne "Soprana" Larsen : Vocals

その時代ごとに心の居場所がある。失われ、掘り起こし、広がり、探す。
1stアルバムのリリースにおいて、最初の分岐点は1995年まで遡る。純粋なブラックメタルサウンドであったIsle Of ManからHEart Of The Agesは更なる高みに達した。ボーカルのJan Kenneth(アルバムにはOvl. Svithjodと記載されていたと思う)の素晴らしい2つの声、エクストリームな歌とメロディックな歌の二面性によるものだ。


クリスチャンサンド(ノルウェーにある地名)の外でレコーディングする理由は、アルバムのレコーディングには24トラックの機材が必要であったが、クリスチャンサンドでは16トラックしかなかったので、プロデューサーのTrondの紹介で、ノルウェーの西海岸にあるスタースタジオを訪れた。ドラムのアンダースはまだ17才、境界を設けることなく、ファンや一般的なメタルシーンの反応など考えることもなく、アルバムのレコーディングを行った。

HEart Of The Agesのセッションの場として、スタースタジオを選んだもう一つの逸話としては、後にアンダースがメンバーとなるCarpathian Forestとの繋がりがある。
「Jan KennethはCarpathian ForestのRogerと過去に関わりがあり、スタースタジオが良いという情報を得たんだ、以前Carpathian Forestがデモをリリースしたことに関係したということでね」とクリストファーは言う「我々は、その設備を使いたいと決心したんだ」
レコーディングの結果は彼らの期待通り、むしろ期待以上のもので、今も昔も記念碑的なアルバムである事を、3人は一様に同意した。

Burzumは物議をかもしたバンドあったが、In The Woods...はレコード会社を通じてこのバンドと同じ思想を持っていただろうか?クリストファーはこのように関連付けられることが好きではなく、クリスチャンはむしろこの事に否定的でさえあり、彼等が皆同意しているのは、In The Woods...は決して過激な一人バンドと思想の共有を仕向けられたり、同じ分類にされているわけではない。Misanthropy(レコード会社)は、その認識はないが、Burzumに生活するきっかけを与えたのだ。

Christopher "C:M." BotteriのYoutubeベージより

HEart Of The Agesはよく売れ、ほとんどがCDで、(推測ではあるが)2500部がすぐに無くなってしまった。彼等はその中のコピーを持っていて、後にリリースされる物も同様にだが、クリストファーは特に彼のコレクションの中にこのデビューアルバムが含まれていることを誇りにしていた。
HEartに使われている大文字の"E"は、多くの知るところと思うが、Jan Kennethの明かした、音楽のアート(art)、In the Woods...のアート(art)、を意味する巧妙な言葉遊びで、誤植と捉えた人もいたようだが、ボーカリストが巧妙に仕組んだものだった。

このアルバムのカバーに使用された「孤独な森」の写真は、実のところ住居がある場所で撮られたものだ。以前Oddvar(A:M、ギタリスト 2013年没)の話によると、もしカメラのレンズを替えれば、たくさんの家を写し出すこともできたそうだ。君たちの中にはすぐにそれが出来るも人もいるであろう。アンダースが彼の電話でその場所の写真を見せてくれた、当時から20年以上経っている最近撮られたものだ。

スタースタジオに向かう前に、このバンドと特にJan Kennethは、やる気を失っているアンダースに対して問題を抱えていた。そのドラマーがバンドのメンバーとして繋がりを確固たるものにするため、ケツを蹴り上げてやる気を起こすために、正規メンバーから外した。私が覚えているのは、アンダースはいつも頻繁に私のドラムを使い、私のバンドと彼のバンドとでリハーサルスペースを共有していて、バンドは彼が自分のドラムキットを買って、献身さを示すのを期待していた。代わりのドラマーとして地元の人間(Moten Tidemann)と数回リハーサルをした後に、それは実現せず、アンダースは元のIn the Woods...のドラマーに戻った。

奇妙なことに、そのドラマーはセッションドラマーとして(一時的なメンバーとして)ブックレットには記載されていて、もしその理由を尋ねられるなら、思い起こせばそれは子供じみた出来事だった。ボテリ兄弟は私がこの事について明かすことに同意はしてくれなかったが、主にJan Kennethがアンダースとの問題を抱えていて、そのエピソードとして確かなのは「アンダースを自らしっかりするよう仕向ける為の事だった。ただセッションなんて小細工は必要なかったが、彼がメンバーとして戻ってきてくれれば、我々どちらにも良いことだった。アンダース抜きにはHEart Of The Agesはあり得なかった」

バンドの写真は我々にとって重要なものではなかった。デビューアルバムにはメンバーと何人かの友達と焚き火を囲んでいる写真がある。編集が終わったときにIn The Woods...から離れていった者がその友達に含まれている。奇妙な、大きな髪で金髪の男、Bjorn Harstadは後にIn The Woods...のギタリストとなる、プロデューサーだ。
クリスチャン:「私は写真を撮られるのが嫌で、我々の宣伝用には基本的には森や木々の写真を使った。この事は一部の雑誌からは評判が悪く、特にTerrorizer(イギリスの雑誌)はこの事にあまり肯定的ではない印象の事を言われた」アンダースは続けた「イメージしやすいものがあった、ブラックメタルシーンにある全てのバンドが同じイメージに基づいているというようなことが、音楽は二の次なんだ。既にあるイメージが引き継がれていた。我々はこのような印象を与えたくなかった、音楽が一番大切で、メンバーの写真を撮らなかった。見た目でアピールすることはしたくなかった」
革の衣服や鋲やコープスペイントはやらない。
「我々はイメージを排除したんだ」

三人は今でもこのアルバムに誇りをもっていることに同意した。そしてクリストファーは "Yearning The Seeds Of A New Dimension" が一番お気に入りの曲だというが、アンダース・ コブロとクリスチャンはこのアルバムについて擁護した「俺たちは全部が好きだ!」

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